映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「HELLO WORLD」感想(ネタバレあり)

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HELLO WORLD、みた。直美が瑠璃と出会う時、すべてが始まる。瑠璃を追いかける中で明らかになる二人の運命と世界の秘密。自分の気持ちと向き合い、丸ごと愛おしく抱きしめる。きみこそが世界そのものなのだ。これはアダムとイブがエデンの園を追放される、創世記のヴァリエーションなのかもしれない。

HELLO WORLD」における直美と瑠璃の関係を見ると、どうしても北村匠海浜辺美波という二人を思い出さずにはいられない。リアルとフィクションの相補的な力を感じてしまうのだ。そして物語として直接の関係があるわけでないが、「君の膵臓をたべたい」も何度か頭をよぎった。

立ち止まらざるを得ない悲劇があったとしても、直美は、そして物語は、つねに未来のほうを向いている。一見すると複雑だけど、先へ先へと引っ張る力が中心にある。複層的で幾重にもレイヤーを積み重ねながらも、構造としてはじつはすごくシンプルなのだと思う。

HELLO WORLD」は、プログラミング言語の入門書のいちばん最初に載っている例文だ。それを頭に入れておくと、この映画に感じていた重々しさみたいなものはふっと晴れるのではないかと思う。終盤、直美がとある人物にかけられる言葉とそのあとの行動(=未来のナオミが、自らの命と引き換えに、世界の安定と過去の自分の幸せを取り戻したこと)に心揺さぶられた。あれはまさしく自己愛だと思う。

北村匠海ナチュラルな演技も、浜辺美波のすこし揺れるような声も、すばらしかった。松坂桃李は、少々ミステリアスかつダーティな役柄にぴったり。地味に福原遥もよかった。中盤以降のアニメーションは、さまざまな映画が頭をよぎった。たとえば、全体の構成は「エターナル・サンシャイン」に近いし、電子世界の移動は「ドクター・ストレンジ」の異世界旅行の場面、クライマックスの月面は「インターステラー」を思い出した。

さらに物語の骨子は細田守(電子世界はもろに「サマーウォーズ」でした)と新海誠、そして庵野秀明

OKAMOTO'SやOfficial髭男dismの起用は、もろに「君の名は。」の影響を受けているだろう。パーツごとに分解すると、それほど新しい要素はなく、デジャブすら感じるのだが、混ぜ方がうまい。いい塩梅に、丁寧につくっていると思った。本当はゴリゴリのSFなのに、それなりに口どけまろやかになってる。

ここまで複雑でないにしても、新海誠監督の次回作はハリウッド映画のテイストを取り込んだSFかなあと思っていたので、先取りされてしまった感じがある。