映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」感想

f:id:StarSpangledMan:20190926000641j:image

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に、超絶大傑作!映画は、所詮すべてはマスターベーションであると最初に宣言している。肥大化した自我が地球を覆い、人類を飲み込む。他者との繋がりに醒めてしまった孤独、そして最後の「気持ち悪い」。アダムとイヴの甘美な交わりなんて訪れない。

途中から作り手の自意識がどんどん漏れてきて、映画としてはどんどん不思議な形になっていくのだけど、一方でかなり直接的な表現でこの物語で何をやりたいのかってことを表してもいる。助けてくれって叫んだって誰も手を差し伸べてくれない、死にたいけど死ぬ勇気はない。かなり病んでる。

人類補完計画=他者と身も心も交わり融解するセックスの構図は、あまりにそのまま過ぎるが。別にシンジくんがセックスを知ったからと言って、廃人の裸でマスターベーションするような心根は変わらない。使徒が攻めてきて地球が割れても、世界にたった二人残されたって、他者は他者のまま。

NERVのメンバーは虐殺され、ミサトが死んで、アスカがバラバラになる。この絶望感、たまらない。最後はみんな等しく液体になる。空虚な青春パートが不気味ながらも陰惨なSFパートを中和したTVシリーズに比べ、最初から最後まで悪夢の劇場版。ユートピアを期待させて突き落とすラスト。しびれる。

だって人と人が分かり合えてるなんて幻想じゃないか、みんな分かってるフリしてるだけだと。そこまで考えが行ってしまったら、引き返せないかもしれない。だれかに関心を持つこともないだろうし、仮に誰かが手を差し伸べてくれても、それを受け止められない。これは「拗らせ」ではなく、普遍だろう。