映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「怪怪怪怪物!」感想

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怪怪怪怪物!みた。傑作!いじめられっ子のリンと「怪物」との出会いから始まる地獄を描く。人は反撃されないとわかっている相手にしか手を出さない。「格下」を苛めで保たれる自尊心、守られる人間関係。誰だって「善人」でありたいと願う。でも「悪人」が業火で焼かれる様に興奮する自分もいるのだ。

圧倒的に有利な状況で、目の前の人間の生殺与奪の権利を握っていると自覚したとき、人は相手を凌辱する誘惑に勝てるだろうか。「この世界には悪人とバカしかいない」とリンは言う。弱い者苛めをしないと生き残れない社会。ただひたすら傷つけ、騙される苦しみを受け容れる人間は「バカ」なのだろうか。

焼き殺される人間を見て興奮する高校生たち。でも、彼らの醜悪さを自分は笑えるのか。あの場面、たしかになにかが体の内側でたぎるのを感じた自分がいる。ジューサーでかき混ぜられるスイカの果肉と果汁。その一方で虫けらのように叩き潰されていく人間の血と肉。そして全てを包む禍々しい地獄の業火。

「冬冬の夏休み」でも知的障害の女性が出てくるが、彼らはある意味聖者めいた存在として映画の中にいる。終わりなき因果から外れた、妬みや裏切りのない人間。でも、この世界に彼らの居場所は用意されていない。他人を蹴落としてうまく立ち回れるのが「強者」なのか。そんな腐った世界ならいっそ…。

だからあのラストはすごく苦しいけど、同時に解放的でもある。どうせ自分たちは焼かれる側の人間ですよ。でも、映画を見ているあいだは聖者の気分で、悪人が地獄に堕ちていく様を観察したいじゃないですか。作り手はそこすらも見越していて、とっても意地悪なオチを用意したなと思うけど笑