映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」感想

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マンチェスター・バイ・ザ・シー、超絶大傑作!死んだ兄の息子の後見人になったリー。ふたりの奇妙な同居生活がはじまる。この男は何のために、何に幸せを感じて生きているのだろうかと考える。どうあがいても癒えない傷はある。それでもあしたの先を想像できるということが〈希望〉なのかもしれない。

リーはおそらく一生後悔し続けるだろうし、もう明るい頃の彼に戻ることはないだろう。辛くなったら苦しくなるまでビールを飲み、怒りを抑えられずに何かに当たる。死ぬまで地獄の道を歩くのだ。でも、心の中にぎちぎちに詰まった絶望と悔恨のあいだにすこし小さな隙間ができる。すっと涼しい風が通る。

パトリックは思春期真っ盛り。考えることと言えばガールフレンド、学校の友だち、アイスホッケー。昔はあんなに可愛かったのに、いまでは皮肉も口にする。憎たらしいけど、リーは子どもの頃を知ってるから。やっぱ愛おしいんだよね。そしてきっと彼に兄の影も見ているんだろう。船に乗るリーの笑顔よ。

この他人になりきれない距離感がとてもかわいい。ジョーの死に向き合いきれないふたり。マンチェスターの前にひろがる穏やかな海のように、やさしく朗らかだった男を喪って戸惑っているのだ。悲しい気持ちももちろんだが、どうすればいいんだ?と。お互い相手が求めると同時に、うっとうしいのである。

他人の愛し方をわざと頭の中から消し去って、すっからかんの心で生きようと無意識に変わってしまったのがリーという男なのではないか。死んで前世の記憶をリセットでもしない限り、永遠にそのままなのだろう。べつに乗り越えられない過去があってもいいじゃないかと。乗り越えられなくても人生は進む。