映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ミスミソウ」感想

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ミスミソウ、みた。両親を焼き殺されたいじめられっ子の復讐からはじまる暴力の連鎖を描く。凍てつく雪原と温かい鮮血のコントラスト、そして儚げに佇む野崎=山田杏奈。カメラを突き刺すクロスボウ、停まらず殺しにかかる除雪車、ナイフでの決闘など、アクロバティックなバイオレンス描写は見どころ。

この集落は本当に地獄ですね。もうすぐ閉校するという設定から分かる通り、未来がない。誰も希望を持っていない、どうせいずれ終わるんだと諦めているから、手を差し伸べないし、助けも求めない。そういう閉鎖的な環境にひとりの少女が放り込まれる。一度歯車が狂うと、誰にも止められない。

なかなかにスプラッター。丸焼けになった妹のビジュアルからして強烈だが、アイスピックの目玉突き刺しから始まり、指の切断、はらわたの飛び出し、除雪車ミンチなど胸糞描写の連続。まあでも、あまりに極端な状況で起こるから、コミカルに見えてしまう面もある。特に除雪車。さすがに停まれたでしょ。

誰かが突っ込んでた気がするけど、時間の流れがわかりにくい。もっというと、おそらく何日かの間の出来事なのだろうが、大人たちの動きが遅い。特に警察が連続殺人を野放しにしているように見える。いじめられっ子が溜め込んでいた鬱憤を晴らすような話かと思ったが、ひたすら暴力の虚しい映画だった。

山田杏奈が良い。生まれながらにして不幸なオーラを漂っているかのよう。ヘタな女優が演じると、きっとただグロいだけで終わってたのだろうけど、彼女が演じたおかげで、より切なく、儚い映画になったと思う。状況に応じて〈怒り〉や〈悲しみ〉にグラデーションを加えている。多彩な感情表現は天才的。