映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「国家が破産する日」感想

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国家が破産する日、みた。1997年の韓国通貨危機を、韓国銀行職員、工場の経営者、金融コンサルの3人の目線から追う。庶民の生活を無視し、大企業と富裕層の方しか向かない政府、不透明な政策決定プロセス、外資による経済の蹂躙…いまの日本の状況と重ねざるを得ない。ハンの無力感と絶望が重く響く。

なかなかに硬派な作り。だからか、良くも悪くも期待の範囲内ではあった。「政府が大丈夫だと言っているから」「みんな騒いでいるけど何とかなるだろう」という国民の楽観的な態度。その間にも悪知恵の働く奴らは密室で大切なことをどんどん決めていく。気付いた時には地獄。「俺は騙されないぞ」である。

ユン=ユ・アインが「マネーショート」的な立ち回り。しかし、彼の快進撃に笑いや面白おかしさはない。あるのは、富める者は富み、貧しい者は貧しくなっていく現実のみ。ハン=キム・ヘスは歴史の流れに抗う〈正義〉の人。しかし彼女の努力はことごとく粉砕される。金融室長のいやらしさ!

ヴァンサン・カッセルえんじるIMF代表もそうなのだが、彼らははなから議論をする気がない。詭弁を弄し、常に話題の前提をひっくり返して主導権を握ろうとする。正論では勝てない相手。ハンの怒りと悔しさのこもった目つきよ。あれは搾取され続ける庶民の無念を代弁していると思う。

はじめから〈勝者〉の決められた社会。ハーバード大学OBの会合は吐き気を催す。しかしこの映画における唯一の希望、そして全体を貫いているルールは「自分を突き通した者は、少なくとも〈負け〉にはならない」ということではないだろうか。他人を信じすぎたり、途中で諦めてしまった者は地獄を見る。

これは〈正義〉と〈悪〉どちらにも共通するルール。世界を牛耳る連中に少なくとも一発ぐらいパンチを食らわせたいものだが、それは困難な話である。それでも、抵抗の意思を示すすことはできる。屈しないという意思、絶対に諦めないという希望。そうすればどんな結果であれ自分を護ることはできる。