「欲望という名の電車」感想
欲望という名の電車、みた。零落した地主の娘・ブランチが娘夫婦の家に転がりこむ。嘘を捨てられない女。若さと容姿へのこだわりや良家のプライドが彼女をがんじがらめにする。偏見と正論の入り混じった罵声で陵辱するスタンリーの恐ろしさよ。彼女が救われる未来はないのだろうか。頗る後味が悪い。
ヴィヴィアン・リーの演技は当時高い評価を受けたらしいが、いま見るとコッテリ過ぎる気もする。その芝居じみた振る舞いがまたブランチの閉じた世界の狂気をすさまじいものにしているのだが。「何がジェーンに起ったか」のベティ・デイヴィスを思い出した(映画の中身の記憶はあいまいだけど)。
ブランチを束縛し、地獄へと突き落としていくのは彼女自身の選択のまずさだけではなく、周囲の無理解だったり、心無い言葉の暴力だったり、どうしようもない部分も大きい。なにより30過ぎただけで「用無しの年増」扱いされるのだ。すこしはマシな社会になっただろうか。ファブ5の力がほしい。
「欲望という名の電車」というタイトルから、「闇の列車、光の旅」みたいな、勝手に電車の映画なのだと思っていました。本当はブランチの故郷から妹夫婦の家への旅路のこと。最後まで見ると皮肉に感じる。こないだ見た「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はけっきょくなんのことやらわからなかったけど。