「熱帯雨」感想
熱帯雨、みた。国語教師のリンは不妊治療が上手くいかず、夫との仲も破綻しかけている。そんな彼女に生徒のひとり・ウェイルンは好意を抱いていた。雨の中、二人きりで車に乗る。窓を滴る雨、肌に貼りつく湿度、官能的なワイパーのリズム…。禁欲からの解放が爽やかな作品。
あらすじだけ追うとポルノのようだけど。シンガポールの空気ってどんなだろうと思う。開けっ放しの窓に吹き込む雨の勢いからいろいろ妄想していた。ずっと雨だからとにかく車移動。外は歩かない。終始雲が太陽を隠す昼の薄暗さに悶々とする。まったりした雰囲気のリン先生も人妻の色気が凄い…。
ワイパーのリズムってエロいよなあと思っていたので、映画の中でそういう風に描かれていたのは「やっぱりそうだよね!」となりました。あの独特の遅さよ。あと、ドリアンってこんなにムズムズするフルーツだっけ?ニュースで流れるマレーシア情勢と、先生と生徒の関係。抑圧の末になにが訪れるのか。
「子はかすがい」なんて言葉があるけれど、リン夫婦に子どもはいない。でも、介護が必要な義理の父はいる。二人の仲をかろうじて繋ぐのが老人の介護なのだ。ウェイルンに孫を見るような目で接する可愛らしいお爺さんではあるが、そんな関係、あまりに虚しくないだろうか。
シンガポールでの国語(中国語)の扱いが面白かった。「そんなの習ってビジネスに役立つわけ?」と。映画を通して初めて知るその国の風俗。全体的に視覚と聴覚でたのしむ映画で、リン先生の行き着く先に強く心動かされる、という感じではなかった。でも、それなりに見応えのある作品でした。