「ニーナ・ウー」感想
ニーナ・ウー、大傑作!下積みの末、話題作の主演を掴んだニーナだったが、とある〈悪夢〉が彼女の現実を蝕むようになり…。Metoo運動に触発されたサスペンス。乱切りの虚構とメタファーが観客を振り回す。作品全体を覆う、常に不安や恐怖に追い回される焦りや緊張感こそ〈告発〉なのだと思う。
サスペンスとしては非常に見応えがあったし、かなり好きな部類。だけど、一方でこれがMetoo運動から始まった一連のムーブメント、そして社会に蔓延るジェンダー不平等という高度に政治的かつタイムリーな話題をあつかう映画として、百点満点パーフェクトな手法かというと、俺は危ういラインだと思う。
たとえば「女の敵は女」要素を入れてくるのは、正直疑問。至るところにギミックが仕掛けられていて、絶対の正解が提示されていない多層的な構造は素晴らしいけど、テーマの扱い方そのものに驚きはなかったかも。脚本は主演も務めるウー・カーシーだが、女性が監督だったらどう変わるのだろうか。
キキ関連のエピソードはやりたいことはわかるけど、もう少しシャープに処理できなかったのかな。正直、展開上そこそこ足かせになっていると思う。文句多めになってしまったけど、方向性が見える中盤以降はスリリングで見ごたえがあった。狂わされていく個人の内面をああやって撮るのはとても映画的だ。