「クレイマー、クレイマー」感想
クレイマー、クレイマー、大傑作!家族を顧みなかった夫と、自由に羽ばたきたかった妻。父としても夫としても失格だったテッドがだんだん〈必死〉になる。ケガの息子抱えて街を走り、クリスマスに職を探し、最後はすべて〈息子のため〉に…。一度は愛したジョアンナとの裁判で傷つけ合う場面は震えた。
フレンチトーストの出し方がいいよね。はじめのテッドの雑すぎ料理法にはだいぶ笑ったけど、思い返せば、あれが〈父〉としてのスタートで。それが最後、〈父〉としてテッドの一つのゴールになる。時間の経過を感じさせて、そしてもういろいろ戻らないものがあるんだと気づかされて、切なかった。
大人って狡くてバカだなあと思うのは、テッドとジョアンナの後悔です。失って初めてわかること。散々傷つけあって当日の朝にならないと気づかないこと。もうダメだ、ぜんぶ手遅れかもしれないと。それでも人生は続いていくし、いまさら自分を変えることもできないけれど。
それでも、最後にエレベーターで二人が交わした瞳には、たしかに希望があった。この映画が清々しいのは、これから先なにがあるのかはわからないけれど、きっとこの三人には明るい未来があるんだろうってことだけはわかるから。正解はないから手探りだよねって苦々しさも含めて。