映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サイゴン・クチュール」感想

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サイゴン・クチュール、みた。仕立て屋の傲慢な娘が1969年から現代にタイムスリップ!没落した実家を救うため奮闘する様を描く。面白かった!アオザイって奥が深い。着る人の美を最大限引きだすフォルムに惚れ惚れ。ポップでカラフルなデザインも眼福。勢いあるホーチミンのカルチャーを堪能しました。

主演のニン・ズーン・ラン・ゴックは、1969年メイクの時だとそれほどだけど、2017年メイク&ファッションに変身した途端、ものすごく綺麗になってびっくりしました。こんなにも洗練されるのかと。絶望的な未来を突きつけられ、もがき苦しむ中で成長していくニュイが健気で可愛らしかったです。

プライドを捨てられず世捨て人になってしまったアン・カインが憎めない。彼女の弱さを非難できるほど強い人、いるのだろうか。また受け入れてあげたくなるチャーミングさがあるのよね。一方、プラダを着た悪魔」をそのままトレースした省略や編集が目に付くし、時々とんでもなく野暮ったい演出が…。

アン・カインとタン・ロアンが再会する鏡張りの部屋の場面は、カメラの置き場所に困ったのか知らないけど、アングル、カット割り共に鈍臭く感じた。これに限らず位置関係がよくわからないカットが時々あり、ノイズに感じてしまった。

劇伴もハイテンションな場面は少し派手なぐらいでちょうどいいけど、エモーショナルはシチュエーションで同じことやられるとしつこい…と思ったり。アオザイという伝統の断絶の裏に、この国が歩んだ凄惨な歴史を想起せずにはいられないが、映画ではその要素は完全にオミットされている。

それが良いのか、悪いのか、俺には判断できないけれど、ひとつ言えるのは「サイゴン・クチュール」はホーチミン、ひいてはベトナムのいまと未来を映そうとしている、ということ。映画自体は2年前の作品だけど、ちょうどその頃自分もベトナム旅行をしていたなと思い出す。

「クレイジー・リッチ」を見た時の寂しさアゲイン。ホーチミンのランドマークもチラホラ背景に映り、観光映画として見ても面白い。これにあとグルメ描写が加われば完璧だった(「塩辛い卵焼き」はでてくるけど)。K's Cinemaで上映して本来のターゲット層が見にくるのか謎だが、良質な商業映画だった。