「さよならテレビ」感想
さよならテレビ、みた。超絶大傑作!「セシウムさん事件」の東海テレビを舞台に報道の舞台裏を取材したドキュメンタリー。不慣れな派遣社員を現最前線に置く貧弱な体制、視聴率至上主義やスポンサーにおもねる是非ネタの存在、第四の権力の信頼の失墜…〈テレビ〉そのものを皮肉る構造にやられた。
テレビは受動的なメディアであり、視聴者は切り取り、編集された映像を受け取るだけの存在だ。「新春テレビ放談2020」で佐久間宣行とヒャダインが「視聴者は騙されたり裏切られることを嫌い、極端にリアルを求めるようになった」と語っていたが、その通りだと思う。リアルを〈選ぶ〉時代になったのだ。
ベテラン契約社員の澤野はテレビや報道の行く末を案じ、共謀罪の取材に力を注ぐ。弱い人たちの目線に立つことより、自分の生活や出世の方が大事になったエリートたちの組織に、人びとはそっぽを向いている。新人の派遣社員で新人記者の渡辺は要領が悪く叱られ続ける。クビの恐怖で萎縮する悪循環。
キャスターの福島は「セシウムさん事件」で矢面に立たされて以来、表現者としてのあり方に苦悩している。沈みゆくテレビ業界だけでなく、閉塞感から抜け出せないニッポンの社会を象徴する3人の現場社員。そして〈テレビドキュメンタリー〉の枠に潜む大きな罠。単なるエクスキューズではないはずだ。