「2人のローマ教皇」感想
2人のローマ教皇、大傑作!バチカンが不祥事に揺れる2012年、ベネディクト教皇はフランシスコを呼び出し…。人は過ちを犯す。たとえ聖職者であっても。そして戦争、独裁、環境破壊…人類は何度も同じ罪を犯し、歴史を繰り返す。それでも赦し合わなければならない。まずはすぐ隣の〈分からず屋〉から。
田舎の教会の告解室からサン・ピエトロのバルコニーへ。世界は分断されている、今こそ壁ではなく橋を!と叫ぶけれど、酒を飲み交わし、共に同じ神を信じる仲間とすら、人は分かり合えないものだ。しかし、だからと言って諦めていいのか?主義主張で争う前に、目の前にいるひとりの人間と向き合おう。
ローマ教皇ですら清廉潔白ではない。若い頃の過ちを悔やみ、後ろ指を指され続けるのだ。しかし、自分の弱さを知り、より良くあろうと努力を惜しまず、そして、他人の過ちを許せる人は、強いと思う。本当の意味で人間と向き合っていると言えるから。
フランシスコが教皇としての運命を受け入れることができたのも、「神の声が聞こえない」と苦しむベネディクトが光を掴んだのも、結局そこに〈赦し〉があったからではないか。そして対立する2人が最後に見た景色こそ、争いや格差のない、平和な世界への道なのだと思う。ミクロとマクロの行き来が秀逸。
基本的にじいさん2人で散歩しながら会話しているだけなのだが、これがメチャクチャおもしろい。顔の皺一つひとつにこれまでの苦悩や葛藤、背負ってきた重荷が刻まれている。フランシスコとベネディクトの「話が通じない…」の表情が良い笑 幾重にも思考と感情が重なった上に表出するのがアレなのです。
人類が繰り返してきた歴史上の過ちと、2人のローマ教皇が過去に犯した罪の対比。分断される世界と、フランシスコとベネディクトの意見の対立。この二つの軸が交錯し、人類の未来への〈希望〉に収束していく構成がすばらしかった。一方で、オチの〈希望〉がなんともささやかなのも小洒落てる。