映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「転がるビー玉」感想

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転がるビー玉、みた。再開発の進む渋谷で夢を追う3人。自信が持てず弱音も吐けない愛、どこへ行っても居場所がなく、埋められない寂しさを抱える瑞穂、天真爛漫に振る舞うがそんな二人と距離を感じている恵梨香。そして〈取り残される〉孤独を感じるのは若者だけではない。渋谷の空気がリアルだった。

さざ波のように、小さな揺れがゆっくりと3人の心の中で共鳴し、拡がっていく。この物語では大きな事件は起こらない。淡々とした生活は漫然にすら映るが、かえってその動きのなさが彼女たちの迷いやもがきを表している、と言えるかもしれない。一方で目まぐるしく変化する渋谷の街。

恵梨香が路上ライブをするヒューマントラストシネマ渋谷前の歩道橋、その後ろに工事中の宮下公園が映り込むが、それ以外に〈工事中の渋谷〉を実感させる景色がないのは残念だった。渋谷駅西口のストリームも、スクランブルも、交錯する歩行者デッキと銀座線、バス停も出てこない。PARCOもないのよね。

消えゆく渋谷の景色といえば桜丘だけど、それもなかったしな。新国立競技場は印象的なスポットではあったが。日常的に渋谷エリアをウロウロしていて変化を感じるスポットを写さなかったのはなぜだろう?渋谷ローカルの映画としては、俺の見ている渋谷とはズレる部分もあり、ちょっと拍子抜け。

隣の芝は青い。自分が足踏みしている間に、まわりの友人や憧れの人はどんどん前に進んでいる気がする。その焦りや嫉妬、やり場のない怒りの感情はとてもわかる。ふとした瞬間に暗い表情を見せる愛=吉川愛の演技に、ぎゅっと心を締め付けられた。よかったなあ。笑顔に少し影があって好きです。

若者たちのちっとも夢に近づけない焦燥感に、誰も追いつけないスピードで再開発が進む渋谷の街の景色がオーバーラップする。彼らはみんなはしっこが欠けたビー玉だ。ぽんと指で押したってコロコロと前には進まない。表面が丸い完ぺきなビー玉のような人なんていないんだ。誰もが人知れずもがいてる。