「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」感想
ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ、大傑作!マクドナルドを巨大企業に育てた男の執念の物語。生き馬の目を抜くビジネスの世界で這い上がるには、彼のような冷酷さが必要なのだろうか。ブランドを乗っ取られた創業兄弟や捨てられた糟糠の妻など、踏み台にされた者たちのドラマも味わい深い。
ローラ・ダーンの健気さに胸が締め付けられた。クラブに行くためにおめかししてたのに、それを直前でキャンセルされた時のあの寂しさ…。創業兄弟の二人の田舎臭さ、堅実さもよい。弟のニック・オファーマンが特に「マクドナルド感」すさまじかった。
はじめはうだつの上がらないセールスマンだったレイの目が徐々にギラギラと強情になっていく。たった2時間の枠の中でこうも変化を表現するとは。マイケル・キートンの「怖いおじさん」演技がここでも光っていた。トントン拍子で仲間を集め、やがて彼らが出世して成功していくワクワク感はたまらない。
一方でのし上がっていくレイの背中を見ながら、背筋の凍る恐ろしさと、ちょっとの寂しさを覚えるのである。あっという間に遠い世界へ飛んでいく。レイは世界中の人間の食生活すら変えてしまった。観客の自分はどんどん置いていかれた気分に。売れないミキサーを抱えていた頃が懐かしい。妻の気分だ。
そして、やがて彼の広めたシステムに自分自身が組み込まれていることに気づき戦慄するのである。俺自身もまたレイの作り上げた帝国の民のひとりに過ぎない。きのう食べたてりやきマックバーガーのことを思い出す。マクドナルド、あの特別な響きは、サンバーナーディノに起源を持っていたのだ。