映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ジュディ 虹の彼方に」感想

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ジュディ 虹の彼方に、みた。ハリウッド黄金期の大スターの晩年を描く。結局、彼女の〈おうち〉はステージにしかないのだろうか。身も心もボロボロなのに、ひとたび観客の前に立てば強烈に輝いてしまう。その眩しさが、かえってグロテスクに映った。彼女は虚構の世界に生かされていたのだ。大号泣。

彼女は自分の意思もはっきりしない幼少期に、カンザスから連れ去られた。そしてそのまま帰ってこれなかった。カカトを三回鳴らしても、田舎町の〈普通のくらし〉は手に入らない。ステージにしか生の実感がないというのは、俺にはとんでもなく虚しいことのように思えた。

スターとして愛されなければ、まともに立ち上がることもできない。一方で、寿命はどんどん削られていく。たとえすべて彼女の思い通りにいったとしても、けっして幸せにはなれないだろう。ホテルの部屋から引きずり出され、直前までボロボロだった彼女が観客の前に立った途端輝いた時、そう確信した。

ステージ上を羽ばたくように歌う彼女の姿に、俺は涙が止まらなかったです。どんなに人生もうダメだと思っても輝ける場所がある。観客の拍手と愛を浴びにむかうジュディの気持ちを思うと、ぎゅっと胸が締め付けられた。それが奪われたらもう自分じゃなくなる、という切実さと絶望よ。辛いなあ。

彼女がファンの二人と過ごす特別な一夜。男がピアノを弾きながら嗚咽する場面、かなりグッときてしまった。あの頃のジュディは全盛期に比べるとだいぶ落ち目だろうけど、それでも応援してくれる人がいる。そう考えると、彼女はやっぱり幸せだったのかなあ。ジュディを愛おしく思える傑作でした。