「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」感想
三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実、超絶大傑作!1969年の伝説の討論会を紐解く。左翼と右翼の両極によるスリリングな戦いは、意外な結末を迎える。三島由紀夫の懐の深さ、そして学生たちのギラギラとした目の輝き。たばこの煙が充満した講堂の〈熱情〉に抱く憧れはノスタルジーなのだろうか。
東大全共闘きっての論客・芥正彦の繰り出す議論は少々抽象的で、結局なにが言いたいんだ?議論のための議論になってない?と思わなくもないのだが、彼の挑発にたいする三島由紀夫のリアクションが面白い。まわり全員敵のはずなのだけど、本当に楽しそうにしているのだ。
三島由紀夫が共産党革命に備えて結成した組織・楯の会のメンバー(◯期生ってアイドルみたいだ)や、東大全共闘の中心メンバーへのインタビューも興味深い。とくに討論会の司会。けっきょく彼らに話を聞きながら、このムーブメントの総括をしきれていないのは、ちょっと食い足りない。
そもそもの討論会の中身が面白すぎるから、手を加えなくても良い感じに仕上がってしまう。だからドキュメンタリーとして素晴らしいというと、果たして?ではある。しかし平野啓一郎や内田樹の解説は分かりやすく、抽象的な言葉を駆使して展開される三島たちの議論の理解の手助けになった。
三島由紀夫の思想は相容れないところもあるけど、学生だからと手を抜かずに真摯に向き合う姿勢、確固たる信念をもって突き進み、自己を表現する姿に惚れざるを得ない。ホンモノのカリスマだったんだなあと思った。