「ほえる犬は噛まない」感想

ほえる犬は噛まない、大傑作！ポン・ジュノの原点。とある団地で起こる犬の連続失踪事件を描く。黄色のパーカーの少女が団地を駆け回る、このスリルと疾走感！ぺ・ドゥナの朴訥とした雰囲気がユーモラスだけど、箱庭的スケールの物語には貧困、マタハラ、夫婦の軋轢…と社会の矛盾が沈殿する。

ボイラー・キムに関するエピソード。壁の中に死体が埋まっているという嘘か本当かわからない不気味なお話。単なる与太話かもしれないけど、この団地には目に見えない禍々しい何かがあるのではないかと思ってしまう。この映画、コミカルでそこそこ笑えるにもかかわらず、どんよりした気持ち悪さが残る。

教授目前だった同僚が酔って地下鉄に頭だけ轢かれて亡くなったり、警備員が地下でこっそり鍋をつついていたり、犬の命が案外あっさり扱われていたり。シュールな笑いと裏表の〈得体の知れなさ〉は「パラサイト」に通ずるものがある。ぺ・ドゥナは動きが面白いんだよなあ。小動物みたいでかわいい。

物語が団地から一切はみ出ないのが良い。散りばめられたモチーフの寓意性と円環構造、やはり「パラサイト」だなあ。