映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「37セカンズ」感想

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37セカンズ、みた。脳性まひの女性・ユマの成長を描く。いやぁ、面白かった!どこへ行くにも母が干渉してくるし、はじめて出会う人はみんな驚きや好奇の眼差しを向けてくる。なるほど、彼女は目に見えない監獄の中で生きているのだ。でも、彼女にしか見えない景色や喜びもまたこの世界には溢れている。

おそらく普段はお家と職場の行き来だけであろうユマが歌舞伎町を訪れる場面。歌舞伎町って、彼女にはこんなにも煌びやかで驚きに満ちた場所なんだと。外へ飛び出し、いろんな人と出会うたびに世界が広がっていく。でも、だからと言ってお母さんが〈邪魔〉な存在になったわけではない。過保護だけど。

ユマが「私がこんな身体じゃなければお母さんも違った性格になっていたかも」と呟いた時、彼女のお母さんの幸せって、何なのだろうと思った。お母さんもまたユマと一緒になって自分たちを見えない監獄の中に押し込んでいたのだ。

本作のクライマックス、ユマが旅をして会いに行ったとある人物と彼女が一緒になって眺める景色。ああ、ついに彼女はここまで来たんだ。お母さんと二人で入る手すりのついたお風呂場からこんなにところにまで。空が高くて、山々が遠くまで広がっている。一歩飛び出す勇気が彼女をここまで羽ばたかせた。

前半の日常パートは特に印象的なカットや構図が多く、とても素晴らしいと思った(終盤はちょっと失速した印象)。車の窓から新宿の都庁を眺めて、宇宙人の襲来を空想するユマが可愛らしい。全体的に丁寧な作りで、これは映画館で見るべきだったなあ…と思ってしまった。傑作です。