「ラブホテル」感想
相米慎二「ラブホテル」みた。傑作!巨額の借金を抱えた村木はデリヘル嬢・夕美を道連れに自殺を試みるが…。全身から歓びを爆発させる様を見て死ぬのをやめた村木、そんな彼の「天使」の言葉に救われ、支えを求める夕美。絶望の淵にある時、すがりたい相手は既に情熱を失っている。すれ違いが切ない。
相米慎二の長回し、どれも絶品だと思う。港で失くしたイヤリングを探して歩きまわる場面は潮風がこちらに匂ってきそうなぐらい臨場感たっぷり。そして、不倫相手に電話を切られてもなお受話器に向かって「私はね、天使なの。いい子なのよ」とひとり泣きながら語り続ける夕美の生々しい孤独!
地獄の底をさまよう男女の悲劇。そして畳の部屋で脱がされるしみったれた感じとか、ラブホテルの安っぽい内装のどこか切なく虚しい雰囲気。この昭和の空気感がまたいい味出している。ラストの桜吹雪は過剰で笑ってしまったが、胸をぎゅっと締め付けられる作品だ。