映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「天使のはらわた 赤い教室」感想

f:id:StarSpangledMan:20200512230835j:image

天使のはらわた 赤い教室、みた。超絶大傑作!暴行現場がブルーフィルムとして出回り教師の夢を絶たれた名美と、彼女を探し続ける村木。やはりここでも幸せな交感は描かれない。正直前半はそれほどだが、「三年後」以降一気に惹かれた。襖の間から覗く地獄絵図。「あなたがこっちに来る?」の絶望感!

水原ゆう紀の憂いを帯びた表情。美しく華やかなルックスだが、心は完全に死んでいる。男と寝る様も自傷行為のようで痛々しい。蟹江敬三の野性味溢れる佇まい。ポルノ写真を芸術に昇華したいと語り、名美を救おうとする村木だが、そこにヒーロー然とした爽やかさはない(部屋に「裸のマハ」があった)

鏡や水溜りに映る苦しみに歪んだ表情が現実を突きつける。村木は再会した名美に冤罪だったと弁明するが、彼は彼女に希望を持たせてしまった。もしかしたら救われるかもしれないと思わせて、結局手を差し伸べられなかったのは、あまりに残酷ではないか。すれ違いでは済まない。村木が名美を殺したのだ。

村木が名美にゲイバー?で再会する場面。ぐわんぐわんと画面が揺れ、不愉快なリズムで断絶したカットで繋がれる。男に殴られて帰宅した村木は赤ちゃんのオモチャを踏みつけ、不快な電子音が鳴り続ける。元々死んだも同然の二人が更なる地獄に足を踏み入れる。ラストのゴミ捨て場の場面はひたすら絶望。

「こんなところいてはダメだ」と手を差し伸べた村木に対して、名美は「あなたがこっちに来る?」と。このやり取りで全てがつながった気がする。なかったらこんなに素晴らしい映画になってなかったかもしれない。これは村木の〈失恋〉映画でもある。女を自分の思い通りにしようとした男が罰されるのだ。