映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「トリコロール/赤の愛」感想

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トリコロール/赤の愛、みた。迷い犬を老紳士に送り届けたヴァレンティーヌ。しかし彼は隣の家を盗聴していて…。非対称な愛を描き続けた三部作の完結編。古びた屋敷で語り合い徐々に心を開いていくヴァレンティーヌと元判事。ふたりの間に存在する妙に艶かしい温度。すべてをリセットするラスト!

赤は〈博愛〉らしい。「青」と「白」では夫婦の愛を描いてきたが、本作は少し毛色が異なる。男と女の間のそれとは違う愛の形。博愛のひとことでまとめてしまうのは寂しい。心のすきまに入り込む連隊のような。薄暗い部屋にふたりきり。真実を明かす罪について語り合う。閉幕後の劇場の空気も好き。

電話線が海を越えて向こう側までつながるオープニング。突然グリッドマンみたいな演出がはじまってびっくりした。そして外に停まった車を映してから家の中に移って電話の前で止まるカメラワーク。ここすごい。ワンカットだったが、どうやって撮ってるのだろう。そしてラスト。突然のカタストロフ。

「旅の終わり世界のはじまり」の東京湾の火事のニュースの場面を思い出した。ブラウン管の向こうに映る非現実的な光景。しかし、グチャグチャに絡まった彼らの世界はその事故によってリセットされる。多くの人が死んだはずなのに、なぜかそこに希望がある。「マグノリア」の雨を連想した。