「いつくしみふかき」感想
いつくしみふかき、みた。悪魔として村を追い出された父と、その結果引きこもりになってしまった青年の愛憎劇。渡辺いっけい初主演!どうしようもないだらしなさと勝手さ、それでいて憎みきれない愛嬌。進一役の遠山雄の体だけ大きくなってしまったような存在感も素晴らしい!演出で少し白けるが…。
浩二役の榎本桜もはじめてみる役者だけど、とてもよかった。広志の〈息子〉として進一の対になる存在。ふたりの違いはどこにあったのだろうか。進一は家族ゆえに自分の体をめぐるその血を肯定したい、受け容れたいという気持ちがあったのかもしれない。
ここまでねじくれたのものでないにせよ、家族に対する想いというのは複雑なものである。憎んでなくても、どこかでこう、自分の鏡のような、将来の姿を突きつけてくるような親の姿に嫌悪感を覚えたりするものである。広志と進一の関係とはそういうものだと思う(ゆえに父は干渉しない)。
しかし、色づかい(主に照明)や音楽の入れ方が大げさで残念だった。演出の荒さが演者の頑張りを消してしまっていたように見える。クライマックスの対峙もシチュエーションはドラマティックなのにのっぺりしている。ちょっと物足りない!