映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「パブリック 図書館の奇跡」感想

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パブリック 図書館の奇跡、みた。大寒波のシンシナティで図書館を占拠する70人のホームレスと、彼らと共に立ち上がる職員の姿を描く。声なき者が声を上げる。たとえ世界が変わらなかったとしても「私はここにいるんだ」と主張するために。図書館は市民社会と民主主義の根幹であることを痛感する傑作!

フレデリック・ワイズマン監督「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を思い出す。図書館はつねに開かれたパブリックな空間でなければならない。人類の蓄積した知は誰に対しても、分け隔てなく共有される。日本のとは異なり、アメリカの図書館は高度に政治的な空間なのかもしれない。

映画の中でも市長候補の郡検察官が交渉現場に乗り込んでくる場面がある。単なる有権者向けのアピールでしかないのだが、図書館をどう理解するか、ホームレスの決起を何のためのアクションと捉えるかは、非常に政治的な判断である。図書館の責任者であるアンダーソンの態度にもそれは出ている。

主人公のスチュアートはどちらかというと巻き込まれた側なのだが、徐々にこのデモの主導的ポジションを取ることになる。煮え切らないようでいて芯の強さと頑固さを見せる。それは時にまわりが制止するほど。エミリオ・エステベスのいろんなものを抱えた末の〈落ち着き〉の表現がよかった。