映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「劇場」感想

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劇場、傑作!が、これを好きというのは少し憚られる。なぜならこれは変われない男の虚しさと自己愛の物語。永田の無様さに辟易すると同時にどこか自分を重ねてしまう。それが悔しく、気持ち悪いなと自己嫌悪にも陥る笑 山崎賢人松岡茉優という大スターが看板ながらこの生活臭とどん詰まり感よ!

「火花」と基本的には同じである。舞台に立つということ。不完全な才能がたまたま巡り合ったパズルのピース。変われない男と、変わっていく女。人と人の関係とは残酷なもので、時の移り変わりによって、簡単にバランスを崩してしまう。そのままであってくれと願ったとしても。なんとも切ない。

またもや井の頭線沿線。そしてガラケー。そう、この物語はスマホ世界では成立しない。あくまでガラケー。LINEじゃなくてメール。フリック入力じゃダメなんだ。黄ばんだ歯の山崎賢人はもはやかつてのアイドル俳優ではない。対する松岡茉優。あの純粋無垢な距離取り方ゆえの嫌悪感。残念ながらわかる。

ただ松岡茉優は肌が綺麗すぎる。ダブルワークをこなしてゴミだらけのアパートで寝起きして、あのツヤとハリはおかしい。そこだけは残念だった。しかし、彼女は安っぽい服が似合う。ドンキにキティちゃんのサンダルで買い物に来る感じ。しかし「蜜蜂と遠雷」では麗しいピアニスト。この振れ幅がすごい。

永田の役は池松壮亮じゃないか?とも思ったけど、最後まで見て納得。彼がやったらもっとネットリした感じになる笑 山崎賢人の生来の爽やかさでなんとか見られるものになっている、と言ったら怒られるだろうか。それだけ永田という男は嫌悪感を催すのだ。彼をナルシストと言わずして、と思う。

ネタバレにならない程度に。俺はあの自転車のシーケンスが好きだ。二人乗り、交わらない視線。しかし側に感じる体温。ここに永田と沙希の関係の矛盾と行く末が暗示されている。こういう文芸ちっくな演出が随所にあってとても良かった。思わぬところで刺さるディテールがあり、直視できないところも笑