映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「家族ゲーム」感想

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家族ゲーム、みた。これは不条理メリー・ポピンズですね。何処からともなくやって来た三流大の家庭教師。目玉焼きをすする音、食器が重なる音、手のひらが頬を叩く音。すべてがギシギシと耳に響いて不快だ。同じ空間に居ながら関心を示さない家族が最後に陥るカオス!なんて居心地の悪い映画なんだ!

学校に殴り込んだ時の先生との会話の間が面白い。そしてやはりクライマックス。どんどん〈食卓〉が崩壊していく気持ち悪さったらないですよ。一つひとつのカットが決まってる。狭っ苦しい団地のリビングや子ども部屋と、解放的な野原やコンビナートの対比。すべてが無機質であり工業的。

高度経済成長が終わり、そろそろバブルというタイミング。家族ゲームというタイトルは興味深い。そう、これはロールプレイングゲーム。与えられた役割をこなす。自分はプレイヤーであり、他人はゲームの一要素に過ぎない。そういう意味で吉本はゲームのバグ的存在なのかもしれない。

誰もが異常な世界で、吉本は際立っている。有名な横並びの食卓が「最後の晩餐」を連想させるように、ところどころ聖書的モチーフが散りばめられているあたりにも、彼の特異性が現れていると思う。ラストはどう解釈すればいいだろう。キリストが去った後、この俗っぽい世界は腐ったままなのだろうか。

この映画に登場する様々なイメージを深く読み込んでいってもいいんだけど、聖書的モチーフや無機質さを通して沸き起こる〈感情〉こそなにより大切であって。これらがなにを意味しているのか?を考えるよりも、そういう語り口なのだと捉えた方がいろいろ納得できる。個人的には。