映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「幕末太陽傳」感想

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幕末太陽傳、みた。大傑作!あとから知ったが有名な古典落語をベースにしているらしい。チャキチャキと動きまわるフランキー堺を見ているだけで楽しい!幕末史と絡めた死の匂いから逆説的に湧き上がる生の衝動。ここにいる人たちは命を全力で使い果たしているのだ。江戸の町人として生きてみたいな!

遊郭の建物がすごい。セットがよくできてる。二階に上がる階段とすぐ脇の行燈部屋、客間の並ぶ廊下の奥行き、そのさらに先に突き出すのは通りに面した踊り場。佐平次が動きまわるに十分の舞台。ひとつの建物にも豊かな表情がある。特に佐平次が抜け出そうとする夜中の廊下!ひんやりと恐ろしい空気。

一つひとつのカットが美しい。バチバチに決まった構成、それをテンポよくつなぐ編集。こはるがいないと騒ぎ立てるオヤジの迫る顔!だんだん寄ってくるのが面白い。高杉晋作久坂玄瑞など実在の志士も登場。賑やかな人情噺のバックには常に血の臭いが漂う。鈴木清順けんかえれじい」を思い出す。

「地獄も極楽もあるもんけえ。俺はまだまだ生きるんでい!」と。明らかに異質な墓場の場面。唐突な転調に動揺する僕を尻目に、佐平次は啖呵を切って走り去ってしまった。なんてあっけらかんとしたラスト。同じ川島雄三洲崎パラダイス 赤信号」における終わらない男女の旅路=バスで島を去るを連想。

菅井きんが当時31歳。いやいや、嘘だろ!と思ったら笑 ずっとおばあさんじゃないですか彼女。「洲崎パラダイス 赤信号」もオールタイムベストに匹敵する一本だが、「幕末太陽傳」も相当おもしろかった。川島雄三の作品をもっと見てみたいと思った。