映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「LETO レト」感想

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LETO レト、大傑作!1980年代のレニングラード。抑圧された灰色の世界の地下では、西側のロックスターから影響を受けた新たな音楽が誕生しようとしていた…。お行儀よく椅子に座って鑑賞するロッククラブの観客たち、殻を突き破れないもどかしさ。しかし、音楽と1対1で向き合う瞬間だけは自由なのだ!

真夏=letoのビーチでヴィクトルが見出されるシークエンスの高揚感よ。ロシアといいえば冬のイメージ。調べてみたらきょうのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)は気温18度。東京だったら卒業式シーズンだ。しかもこれがほとんど上限らしい。そんな短い夏と夭折のシンガーの青春の輝きが重なる。

唐突に始まるミュージカルが出色だった。その突き抜けるような勢いと疾走感、音楽がくすんだ景色に色彩を乗せる。特急電車の中で駆け回る「Phycho Killer」に、ナターシャとヴィクトルが路面電車に乗ってマイクのためにコーヒーを運ぶ「Passenger」。「Perfect Day」は赤いドレスが綺麗だった。

俺がいちばん好きなのは「All the Young Dudes」だ。これぞ映画館の音響という重低音が心地よかった。そして〈あの朝〉の表と裏が描かれる終盤。マイク、ヴィクトル、ナターシャ、それぞれの愛がそこに在った。想いのすれ違い続ける歯がゆさも青春の醍醐味である。ラストカットの〈目〉が美しかった。

ロックとロシア語の組み合わせが新鮮だった。ギターの音色と朴訥な言葉の響きが共鳴して、独特の味わいを生み出していた。クセになりますね。