映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アルプススタンドのはしの方」感想

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アルプススタンドのはしの方、みた。誰かを本気で応援し、心の底から「がんばれ」をひねり出すのって、実はものすごく体力と覚悟が要ることなのだと思う。挫折と諦念を乗り越えたとき、はじめてその言葉に熱のこもった想いが乗る。ベンチや客席にいる人間だってモブキャラじゃないんですよ。大傑作!

高校演劇の傑作を映画化したとのこと。ワンシチュエーションの会話劇から「青春とは?」を膨らませる展開はさすが。この映画はグラウンドが映らない、スクリーンに試合の〈主役〉が居ないのだ。それだけではない。いまこの場面に藤野が居るのか、居ないのか。あすははどこで何をしているのか。

その場に誰が居る/居ないに意味が与えられている。そこにサスペンスがあるし、関係性の変化が現れている。だからクライマックスの並びは必然なのである。久住を演じる黒木ひかりの圧倒的主役感。「青空エール」だったら彼女が主演だろうが、この映画は違う。このズラしがすでに面白いのである。

なぜ最近俺はアイドルにハマったのだろうと考えたとき、浮かんできた答えは「一度足を滑らせたから」。コロナ禍でいろいろ落ち込んで、最後に見つけたのが日向坂46だった。自分よりずっと歳下の女の子を応援したいと思うようになったのは、おそらく何かしらの限界を見つけたからではないかなと。

自分にできないことに本気で取り組む人たちを、素直な気持ちで応援しようと思えるようになったのは、俺にとっては新しい発見だった。特に厚木先生の〈戦い〉は気に入っている。俺も中高生の頃だったら彼のことをただの鬱陶しい、綺麗事に酔いしれた大人だと唾棄していたかもしれない。

今だから分かる。決してそんなことはないよと。本気で誰かに想いを託そうとしたら、それはそれで体力が必要だし、決心しなければならない。ああやって血を吐きながら声を枯らして子どもたちを応援するのは、全然簡単なことではない。だからこそあのオチは笑えるし勇気も貰えるのだ。