映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」感想

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僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46、みた。平手友梨奈の体現するコンセプトに向かって個を捨てでも舞台に立つメンバー、不気味なまでに存在を感じさせない大人たち。欅共和国2019は平手友梨奈を祭り上げる儀式のように映る。嘘を信じ、真実を疑いながらもがく少女たちの姿は残酷だが美しかった。

彼女たちのデビュー曲「サイレントマジョリティー」のミュージックビデオは旧東急渋谷駅跡地で撮影された。さらに建替前の渋谷パルコの屋上を舞台にしたアーティスト写真も印象的だ。どちらもいまは存在しない場所。欅坂46のイメージはつねに新陳代謝を繰り返す渋谷の街と不可分である。

しかし、生まれ変わっていく渋谷の街に人工的な匂いを感じ、拒絶反応を示してしまうのは、僕だけではないはずだ。「サイレントマジョリティー」の舞台はいま小綺麗なテナントの並ぶ渋谷ストリームになっている。ここに漂う〈大人の都合〉とその胡散臭さに、欅坂46の〈大人の不在〉を重ねたくなる。

正直、この映画は「欅坂46とは?」「このグループにとって平手友梨奈とは?」にフォーカスを当て、全体を構成しているので、それぞれのメンバーの顔がはっきり見えてこない。しかし一方で彼女たちが世間から言われていたような〈操り人間〉ではないこともたしかだと知った。

ひとりの少女が天才として祭り上げられていく。そのパブリックイメージと現実のギャップにはあまり焦点が当たらない。平手友梨奈の本心はこの映画からは読み取ることができないし、あえてそれを省いている。肝心の中心部が空白なのだ。そして、この映画のあり方こそが欅坂46なのではないか。