映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「オール・ザ・キングスメン」感想

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オール・ザ・キングスメン、みた。反汚職を訴える田舎の泡沫候補州知事の座に就き、やがて権力に染まっていく…。いくら潰しても復活する腐敗政治、力強い言葉に載せられる民衆。ブロデリック・クロフォード演じるスタークの豹変っぷりが凄まじい。いろいろと既視感が息苦しい映画である。

スタークという化け物を担ぎ上げ、権力の座に押し上げてしまったのはもうひとりの主人公である新聞記者のジャック。田舎の貧困層エスタブリッシュメントの対立も見え隠れする。でも、たしかにスタークの演説は魅力的だ。多少裏で悪いことをしても目を瞑りたくなる。現金だが街も綺麗にしてくれる。

親しみやすい田舎の太ったおっちゃんから、醜く狡猾な権力者のデブへ。この変わりっぷりが凄まじい。月並みな感想だが権力はふつうの人間を180度変えてしまう魔力があるんだろう。力強い味方のはずだった民衆が、愚かな操り人形に見えてくる。ラストのデモ。あれはもう恐怖である。

ただ俺は確実にあの中の一人なのだ。民主主義の居心地悪いところのギュッと詰まった映画だが、70年以上前に撮られた作品だ。良くも悪くも本質を捉えていて、トランプ時代のアメリカにも十分新鮮さを保っている。民衆の対立を煽らないだけスタークの方がよっぽど上品だが。