「マーティン・エデン」感想
マーティン・エデン、みた。貧しく無学な青年が上流階級のエレナと邂逅し文学に目覚めていくが…。ザラついたフィルムの質感、時折挿入される時代不明の回想、ポップな音楽。ディテールと抽象を行き来する不思議な映像に引き込まれる。夢を叶えても幸せになれない。生きることの虚しさを考えてしまう。
主演のルカ・マリネッリの身体がいい。ガッチリした少し窮屈さすら感じさせる体格は彼の生まれや粗野な性格がにじみ出ている。一方そのギラついた目つきは知性と共に活動家のエネルギーを感じさせる。どれだけ知識を身につけても暴力の効用を信じているのが興味深い。
この映画が放つ退廃的で耽美、死の匂いすら漂う病的な輝きは、多くの人が指摘するようにヴィスコンティの作品を連想させる。正直イタリア映画は時間の使い方がもっさりしていて尺以上の長さを感じさせるが得意ではない(本作も例外ではない)のだが、いい意味で「らしくない」編集が心地よかった。