「ウルフウォーカー」感想
ウルフウォーカー、みた。人間とオオカミの対立のあいだで揺れるふたりの少女の物語。「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー」からさらに進化した映像美。光の演出や画面分割など新しい要素多数。お話は「もののけ姫」を超えないが、映画館で見るに値する迫力と密度だった。良作!
民族間対立を描くファンタジーアニメは「ヒックとドラゴン」や「羅小黒戦記」がすでに解を出してしまっている気がする。本作には女性の抑圧も描かれているが、それは「ディリリとパリの時間旅行」があるし…と、お話の中身自体に新鮮味はなく、ケルト神話モチーフ中心の前二作の方が魅力的に見える。
演出も「ブレンダンとケルズの秘密」をはじめて見たときの衝撃は超えなかったかなあ。最初から完成されていた。しかし、トム・ムーアと「カートゥーン・サルーン」がさらなる進化を志向していることはハッキリと読み取れる。もうこの手の表現は伸び代なしかと思ったけど、まだまだ未来がありそう。
壁の中の街を俯瞰でとらえるショットの気持ち悪さと、美しく温かみあふれる森の緑の対比。特に目を見張るのはクライマックス。禍々しく燃え盛る炎の迫力、歩み寄る父と娘のカットのリズム、ウルフウォーカーの神々しい輝き…どれも素晴らしい。「ブレンダンとケルズの秘密」も最後が凄まじかった。
逆に言うと最後の畳み掛けがなかったらここまでの満足感は得られなかったかもしれない。途中まで「これ前と一緒だな」と不安だったのは事実。あと、ロビンとメーヴの声がふたりとも上手かったし可愛かった。子役だろうか。感想おしまい。