「罪の声」感想
罪の声、みた。丁寧に証拠を積み上げ真相に近づく序盤は素晴らしく、星野源と小栗旬が交わるところまでは傑作の予感だったけど、以降、どんどん失速していく…。大きな力に押し流されてしまいそうな「声」への態度は、これまで野木亜紀子が描いてきた物語とも重なる。しかしドローン撮影のダサさよ…。
「朝が来る」と同じく、途中からどんどん物語への興味を失われていくのが自分でも分かった。「こうやって進めば気持ちいいのに」のツボが外されてしまうと、なかなか軌道修正するのが難しい。損な見方だとは思うが、こればっかりは好みの問題なので難しい。
真相まであと一歩までたどり着いてからが長い。物語はエモーションのピークを探りつつ、どこで着地しようかと迷いながら迂回し続ける。7割ぐらいのテンションでぬるぬる最後まで進むのである。正直、宇野祥平が出てきた時点でさっさと話は畳んでほしかった。というか最後の方自白しかないじゃないか。
訥々とした自分語りで繋いだって、お話がドライブするはずがない。そこで回想シーンを挟んだり、ぐるぐるカメラを回したり、観光客気分でドローン飛ばして派手な映像撮ったって、前には進まないのである。過去の振り返りに留まって、ほとんど現代の人物に動きがないのは辛かった。
しかし、星野源と小栗旬の自然なバディ感はよかった。「マスカレード・ホテル」の(エンディングの蛇足演出で台無しになるまでの)キムタクと長澤まさみのタッグを思い出した。異なる思惑を抱えつつ、「真実」と「正義」のために走り続ける。「MIU404」もこれぐらいの味付けでよかったのに。
松重豊、古舘寛治の新聞社コンビの程よい脱力感とプロのカッコよさ!「宮本から君へ」のウザ上司といい、古舘寛治の関西弁キャラ好きだ。生島望役の原菜乃華、見覚えあると思ったら「無限ファンデーション」で南沙良と共演してた。口軽い橋本じゅんの愛嬌!塩見三省は脳梗塞を経てむしろ異次元の凄み。
声なき声に耳を傾け、どんな些細なことでも「なかったこと」にしない。これは「アンナチュラル」や「MIU404」でも野木亜紀子が描いてきた。本作は原作有りだが、通ずるものがあった。異なる立場の人間の思惑が交錯することで生まれる、「こんなはずではなかったのに」の悲哀は「逃げ恥」のテイスト。
多角的な視点から人間のややこしさや愛おしさを描く野木節は大好きなのだけど、本作に関してはエピソードの取捨選択に失敗し、上手く機能していなかったように思う。連ドラでやってたらもっと面白かったかな。各人物1エピソードで回したら…「朝が来る」でも似たようなこと言った気がするけど。