映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「死ぬ間際」感想

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死ぬ間際、みた。東京フィルメックスコンペ作品。アゼルバイジャンの荒野を彷徨する男が、行く先々で出会った女たちを死によって解放=救済していく。彼は天使か、それとも死神か。乾いた笑いと共に詩的に語られるエピソードの数々に見応えはあるものの、いまひとつ絵的なパンチに欠ける印象。

ずーっと死後の世界のようなぼんやり霧のかかったシーンが続く。遠くで会話する主人公と女をフィックスで捉える演出は、僕たち観客が彼らの生き様を神の目線で観察するような、俯瞰的視座を与える効果があると思った。くすんだ灰色の世界である分、夢に出てくる白馬や、紅葉の赤がビビッドに映える。

しかし、なんとなく似たような場面が続くので、若干単調に感じてしまった。もう少しアクセント付ければ見応えあったのに。おかげで何度か寝落ちしかけたが、そこはオンライン配信。気になるところを巻き戻してことなきを得た。無意味な人生に価値を見出す、そこに在る愛を知覚するまでの物語。

女性を生から解放し、死ぬ間際の愛を見届けてきた彼が最後に戻ってきたのが母の元という皮肉。ラストは強烈で腹に重いパンチを喰らったような鈍さがあった。モノローグで語られる詩は、将来の妻と息子に向けた言葉のようだ。いずれ手に入れるであろう愛を信じて、主人公はこれからの人生を歩んでいく。