「妖星ゴラス」感想
妖星ゴラス、みた。地球滅亡の危機に世界中の人びとが立ち上がる。冒頭に死ぬ船長がいちばん魅力的に見える程度には薄味なドラマだが、ゴラスが近づくにしたがって高まる切迫感、クライマックスの大波に飲まれる東京の特撮はさすが。「我が東京は全滅ね」『また新しい東京をつくればいいさ』だって。
あのラストは「シン・ゴジラ」の原型だろうか。海に飲まれた東京の「新しい姿」は、「天気の子」公開時に類似を指摘する人がいたような気が…しなくもなくもなくもなくもない。いいじゃんまた作り直せば、だってさ。東日本大震災の後もそういうユートピア願望的な言説を見かけたけど、結局どうなった?
「妖星ゴラス」は、隼号が全滅する冒頭15分こそ湿っぽく悲壮感にあふれているが、その後はわりとカラッとしている。「サンダ対ガイラ」の方がよっぽどこの世の終わりの心地がした。「60年台から見た80年代」という背景も影響しているだろうか。基本的には明るい未来を前提にした作品なのだと思う。
地球全体が危機に瀕しても、各々の国のリーダーが好き勝手なことを言ったり、失敗を認めず責任をなすりつけあったりする姿を僕たちは知っているから。ポスターから「世界が無残に崩壊する」英語を期待して見たら、能天気に再建を誓うオチで終わったのでガッカリした。ゴラスよ、地球に当たってくれ。
結局のところ「妖星ゴラス」はパニック映画ではなく、怪獣映画だった。ゴラスが近づく真っ暗な東京で、サイレンかき鳴らして防災無線がひたすら避難を呼びかける。当時のひとは空襲を思い出したのだろうか。あまりに時代感が違うので、いまと見え方が同じではない可能性もあるなとも思う。