「バクラウ 地図から消された村」感想
バクラウ 地図から消された村、みた。宇宙から始まるオープニング、道端に散らばる棺桶、UFO型のドローンなどSF的序盤から、西部劇を連想させる中盤の展開、そして血と暴力のクライマックス…と掴みどころのない、ジャンル横断的な構成で飽きさせない。腐敗と差別への抵抗の物語でもある。面白かった!
地味に効いているのが音楽。素朴な民族音楽風のサウンドもあれば、ノーラン作品のハンス・ジマーのように重低音を響かせたSFテイストの曲も流れる。あれもこれもと盛り込んでいるのに、話が発散せず、不思議な吸引力をもって物語が進んでいくのは、軸がしっかりしているからだろう。
特殊な村を舞台にした作品というと「ミッドサマー」にどうしても触れたくなるけど、フォーマットは西部劇だと思う。ルンガを村に呼び寄せ、ご飯を食べさせる場面は「七人の侍」を思い出す。しかし、そこにブラジル政治の腐敗、有色人種に対する差別など現代的テーマが描かれていく。
ルンガの仲間たちしかり、村にやってくる殺し屋しかり、名前を覚えるほどではないにせよ強烈なインパクトを残すキャラがたくさん出てくる。ここはよく出来たB級アクション映画的な味わいがあった。流行り方次第ではツイッターでデフォルメしたマンガがバズるような、程よい粒立ち感。
しかし、いまひとつテンションを上げきれなかったところはある。どうせならもっと味が濃く、刺激の強いものを…と思ってしまうのは、わがままだろうか。特にクライマックスはもう少し盛り上げることもできたと思うが、敢えてそうはしなかったんだろうな。でも、思わぬ当たり映画でうれしかった。