映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サイレント・トーキョー」感想

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サイレント・トーキョー、みた。クリスマスムードの恵比寿に爆弾の恐怖が忍び寄るオープニングから渋谷大パニックの流れはすごく楽しい。見慣れた景色が地獄になるのは、映画の醍醐味。それを渋谷で見られるなんて。でも、そこから先は尻すぼみ。相棒2時間SPでも見ましょう。そっちのが面白い。

前半はかなりテンポが良く、あれよあれという間に事態が進展していく。登場人物の背景を変に深掘りすることもなく、邦画大作系にしてはめずらしくハードボイルドな作り。正直、このままのテンションで最後まで行ってくれたらかなり好きだった。残念ながらその願いは簡単に打ち砕かれるわけだが…。

犯人が佐藤浩一と冒頭で明かされ、新内閣の発足のニュースが流れる時点で、ある程度政治犯であることは予想がつくし、なんとなく言いたいこともわかるのだが、特にどんでん返しがあるわけでもなく、そのままヌルッと話が進む。それでいて謎の散りばめ方がヘタ。回収もすべてセリフ。

いちばんの山場がドライブしながらおしゃべりとは、まじめにスリラーを撮る気がないのではないかと疑いたくなる。そもそも政治犯なら一連の事件に対する世の中の反応を見せるべきでしょう。回想パートの毎熊克哉でちょっと笑ってしまった。主張も古いし。なんとなく前政権を匂わせてはいたが。

渋谷のハロウィンの騒動から着想を得たと思われる、中盤の山場。ここはさすがに見所がある。いくらストーリーが相棒元旦スペシャルの真似事でガッカリ度高めと言えど、この渋谷大パニックを劇場で見逃すのはもったいない。あそこで騒いでるカッペみんな痛い目見ればいいのにという願いを叶えてくれる。

爆弾テロの危険があれど「場所と時間わかってるんだからその時だけ避ければ大丈夫」とクリスマスディナーに向かう広瀬アリス演じる女性や、その他大勢のヤジ馬の呑気さには、皮肉にもコロナ禍のニッポンのアレコレが重なってしまう。そして、あのちゃん!これ作ってる人は意地悪だなと思った。

映画で描かれる政治的主張の古臭さ、「それでも信じてみよう」とかいうセリフのダサさに感じた加齢臭は、結局のところ渋谷テロのパートの若者への目線、その演出の安直さと不可分のものであると思う。むしろああいう安い主張に自衛隊使わないでほしいけどなあ。映画の中の首相と同じでしょ…。