映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アニアーラ」感想

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アニアーラ、みた。火星への移住者8000人を乗せた宇宙船が軌道をはずれ、5年、10年…と放浪の旅を続けていく。スウェーデンノーベル賞作家、ハリー・マーティンソンの長編叙事詩を映画化。さすが北欧。青空を渇望する人間の苦しみ、終わりなき冬に蝕まれていく心…。最後の字幕の絶望感よ。大傑作。

地球から宇宙船に乗りこむエレベーターのショットから始まる冒頭。ここの質感だけで「面白い!」となった。SF的なガジェットは登場せず、近未来的な屋外撮影がほとんど。宇宙服もなく、普通にラフなTシャツやチノパンを着ている。予算的な都合もあろうが、逆に妙なリアリティを感じてしまう。

助かる見込みもなく、ただ宇宙船の中で時間がすぎるのを待つ。この感覚は、冬が長く日も短い北欧ならではの感覚なのではと推察する。そして幸か不幸かこのコロナ禍の状況において、ひたすら家でじっとしている時間が長いと、映画で描かれる厭世的な価値観、未来への失望が身に染みてわかってくる。

自殺したAIを崇拝し、乱交ふける男女の恐ろしさよ。なにより絶望的なのが、人は簡単には死ねないということである。もはや未来がないと分かっていても、人はふつう「死」を選ばない。どんなに灰色でもあしたを生きる術をさがす。アニアーラ号は死ぬ向かってゆっくりと走る棺桶であり、人生そのものだ。

自殺したAIを崇拝し、乱交ふける男女の恐ろしさよ。なにより絶望的なのが、人は簡単には死ねないということである。もはや未来がないと分かっていても、人はふつう「死」を選ばない。どんなに灰色でもあしたを生きる術をさがす。アニアーラ号は死ぬ向かってゆっくりと走る棺桶であり、人生そのものだ。