映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!」感想

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逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!、みた。レギュラー版の「胸キュン」的フックはなく、2時間の尺にこれでもかと啓蒙的要素を詰め込んだので、若干カタログ的な捌きにはなってるが、三ヶ日にこの内容をぶっ込んだ意義は大きい。民放の社会派ドラマは野木先生の孤軍奮闘ですね。

そして一部の人が触れるように、このドラマは紅白歌合戦の「うちでおどろう(大晦日)」をサブテキストにする必要があるというか、相補関係にあるものだと思う。連ドラだったら傍流のエピソードも組み込んでうまく処理できたところ、主流の話しかないのでちょっと説教臭くなってるのはざんねんだ。

野木先生のドラマ、大好きだけどおそらく若干制約がある方がエンタメ度高めに面白く作れるのではと思っている。「獣になれない私たち」は主題先行だったので重すぎて平日夜見るには胃もたれしてしまった。「重版出来!!」や「アンナチュラル」のようにジャンルモノの縛りがあった方が臭くなりすぎない。

たとえばこのドラマでも主人公が誰かに思考の転換を促す、不用意な発言を糾すような場面がいくつかある。お正月に親戚一同集まって視聴するシチュエーションすら想定した「仕掛け」だとは思うが、これは別にドラマでもなんでもない。そう何度も使ってほしくない「飛び道具」ではある。

とても教育的で、見ていて勉強にはなるのだが、楽しいか?と言われると微妙なところがある。妊娠・出産にともなうイベントの羅列になってしまうところがあり、コロナ禍の描写も含めて「あるある」を並べるのはドラマではないんだよなと。繰り返しになるが、連ドラの尺だったらもっと豊かに描けたはず。

もともと逃げ恥ってそういう物語ではあったのだが、連ドラ版は平匡さんとみくりさんがどうくっつくかという「ムズキュン」要素でポップに粉飾されていた面もあり、今回のSP版だけがラブコメのフォーマットをハックした啓蒙ドラマというわけでもなかろう。

もともと逃げ恥ってそういう物語ではあったのだが、連ドラ版は平匡さんとみくりさんがどうくっつくかという「ムズキュン」要素でポップに粉飾されていた面もあり、今回のSP版だけがラブコメのフォーマットをハックした啓蒙ドラマというわけでもなかろう。

オリヴィア・ワイルド監督「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」でも同様の批判はあるが、古き良きラブコメや学園ドラマをやろうとすると、じっさいの社会に存在するはずの格差が隠蔽されがちではある。津崎家には津崎家のリアリティはあるはずだが、優雅な悩みに見える人もいるだろうな。

このドラマを見て「男の悩みも描け」という人は、おそらくざっくりとしか見ていないんだろう。「弱音を吐けない男」のエピソードなんて、結構な配慮を感じた。個人的には取り扱うテーマはとてもバランスが優れているし、かなり練り込んだ内容だと思う。問題は単発ドラマとして面白かったかどうかだ。

ちなみにこのドラマでいちばん感動したのがエンディングの「マドリード恋ダンスを踊る真野恵里菜」だった(スペインの去年春の感染状況はかなり酷かったのだ)あたり、俺がどこまでもこのドラマをメタ的視点でしか楽しめなかったことの証左であると思う。