映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ひかりの歌」感想

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ひかりの歌、みた。四首の短歌をもとに、孤独に生きる女性たちの姿を描く。役者どうしの空気感がすさまじくリアルだ。そこにカメラなんかないように振る舞ってる。言葉ではなく、目線の動きやしぐさで画面に映らない彼女たちの人生を語っているような。ある種のドキュメンタリーのような手触り。傑作!

出演者がどれも俺の知らない俳優さんだから、というのはあるかもしれない。しかし、それにしてもみんな本人役で登場しているのかと錯覚してしまう、恐ろしいまでの生々しさ(一部の子役は若干不安定だが)。たとえば今日子がバイト先の同僚にハグを求めた後「いいよ、着替えて」と遠慮気味に催促する。

勢い余って行ってしまった恥ずかしさと、寂しさと、彼女なりの控えめなところが出ていて、これはもう実録映画なんじゃないかと。ただただそこに人が生きている。そして、この映画はやはり言葉にならないところが面白い。好きな先生の絵を描く瞬間、真っ暗な夜道を泣きながらランニングする時間。

写真館で常連客とだまってお茶を飲む絶妙な間、離ればなれの時間を埋め合わせるように、一つひとつ相手の心に触れていく久々のドライブ。ふとした瞬間に漏れる言葉、おそらくクセなんだろうと思えるしぐさ。この豊かさは言語化が難しい。まるで三十一文字であらゆる情景を表現してしまうかのように。

映画の評価の軸って、映像がキレイとか、音楽が感動的とか、お話の展開が意外だとか、いろいろあると思うけど、俺が「ひかりの歌」に惚れたのはやはり「スクリーンの中の人物がたしかに生きている」と確信できたからだと思う。絶対、ここに登場した人たちは日本のどこかに居る。そういう感動があった。