映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「さびしんぼう」感想

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さびしんぼう、みた。超絶大傑作。富田靖子がとてつもなく可愛い。なんであんなに儚い笑顔をするんだろう。「人を恋することはとっても寂しいから、だから私はさびしんぼう。でも、寂しくなんかない人より、私ずっと、幸せよ。」と。セピア色の尾道の景色と彼女の美しい横顔がこの目に強烈に焼き付く。

ヒロキは望遠レンズ越しに見た百合子の横顔に恋をする。見える面と見えない面、過去の母と現在の母、百合子とさびしんぼう。百合子は海の向こうの島からやってくる。必然的にそこには此岸と彼岸の境がうまれ、そうと示されずとも生と死のモチーフが浮かび上がってくる。あのラストは妙に不穏に感じる。

キンタマ」を連呼する序盤のドタバダ劇はあまりに下らなくて笑った。しかし、良い映画というものは見終わった後になぜかスクリーンの中を旅したような感覚が残る。羽田空港のロビーに降り立ち、じゃあまたねとお土産とキャリーバッグ引きずりながら友人に手を振り別れるような寂しさ。

この映画にはそういう感覚がある。終わったあと、ふとお寺の鐘堂にちょこんと座るさびしんぼうの姿が思い出され、ああ、またあの場所に帰りたいとなる。百合子を送るため、一緒にフェリーに乗る場面。ふたりを照らす夕陽の奇跡的な美しさ。俺もこの目で直接あの景色を見たのではないかと錯覚する。

ショパンの「別れの曲」も耳に残る。富田靖子はおばさんになってからしか知らなかったので、こんなに可愛かったんだと(いまも素敵ですけど)思った。俺の中では「鈴木先生」の足子先生のイメージだったので。しかし最後の別れのシーンは「ブレードランナー」のルトガー・ハウアーのようであったな。