映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「スミス都へ行く」感想

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スミス都へ行く、面白かった!汚職にまみれた政界で自由と理想のために正義を貫くスミスの物語。いやぁ、終盤のフィリバスターは圧巻だった。血の流れない殺しあいとも言うべき壮絶な闘い。アメリカの民主主義はこの頃から変わっていない。輪転機がツイートに代わっただけだ。苦々しいハッピーエンド。

ただ、ひとりの男の執念が世論を動かすカタルシスをそのまま受け容れていいのだろうか。「十二人の怒れる男」を見たときにも同じことを思った。スミスの戦いは自由と正義とプロセスを重んじるアメリカの精神そのものであるし、非常にヒロイックではあるけど、あのオチが民主主義的なのかというと…?

「オール・ザ・キングスメン」のスタークは、スミスが権力に溺れた未来の姿なのかもしれない。セットで見たい作品だ。ワシントンにやってきたスミスが、ベテラン議員や記者たちにピエロにされる序盤は意地悪なコメディ。ジェームズ・スチュアートの演技がアホに振り切りすぎて危うい人にすら見える。

ペイン議員を演じるクロード・レインズがとても良い。人の良さそうな紳士然とした外見と、陰湿で腹黒い内面のギャップがいかにも「政治家」である。どちらにも振り切れないグラデーションが、場面ごとに異なる彩りを与えていて、単なる悪役とも言えない、魅力的な人物になっていた。

心の内が読めない上院議長も面白いキャラだったなあ。そしてこの頃の映画にしては珍しく「恋仲」とも言い切れない関係に発展するヒロインのサンダース。ジーン・アーサー、あんまりよく知らないけど良い。傍聴席からの目線の会話が楽しい。よく考えるとスミスの奮闘はほとんど彼女のおかげ。