「アンコントロール」感想
アンコントロール、みた。未体験ゾーンの映画たち2021にて。デンマークのゲットーでは、警官の暴行事件を機に移民たちの不満が高まっていた。ジェンスとマイクの巡回中、緊張はついに頂点に達し…。デンマーク版「レ・ミゼラブル」ともいうべき、北欧映画特有のソリッドな質感がたまらない良作!
あれよあれよという間に事態は悪化していく。ゲットーにはひとりも味方がいない。出口の見えない地獄は、さながらソマリアを舞台にした「ブラックホーク・ダウン」である。まず主人公のひとり、マイクのおっかなさ。最初、移民たちが怒って暴れ出したとき、「成敗」できる理由できて喜んでたと思う。
ジェンスもニュートラルな立場を取るが、この状況では完全に悪手なのだ。彼に求められていたであろうマイクのブレーキ機能を果たしているとは思えない。一方のゲットーの住民たちもまた怒りに火がつくと止められなくなり…。ゲットーの中は完全に彼らのテリトリーだ。集団で押し寄せてくる様に戦慄。
もちろん、根底には貧困や差別があるのだが…その分かり合えなさに「ドゥ・ザ・ライト・シング」的な虚しさを感じる。中盤以降、ジェンスとはぐれたマイクの経験する数々の出来事に、若干の安心を覚えつつも、それがまた気休めでしかないことをクライマックスで知ることになる。
デンマークに移民のイメージがなかったので、あのようなゲットーが存在することに驚いた。そういえば「特捜部Q」シリーズでも移民差別は重要なテーマとして描かれていたっけ。展開にもう一捻りあってもよかったけど、最後まで緊張感あふれる良質なクライムサスペンスだった。