映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」感想

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オクトパスの神秘:海の賢者は語る、みた。精神を病み、ふるさとに帰った映画監督が、好奇心旺盛なタコに出会い、やがて「友だち」になっていく…。これはラブストーリーと言っていいかもしれない。ドキュメンタリーというのが信じがたい、驚きと発見に満ちた傑作。まさかタコの生涯に泣くとは…。

ことしのオスカーの長編ドキュメンタリー作品賞を獲った作品。演出めいたパートもなくはないのだが、クレイグの「彼女」に対する想いの強さ、そして、言葉を交わすことはないもののたしかにそこにある絆を見て、感動せずにはいられなかった。警戒心を解いてのそのそ近づいてくるタコ、信じられる?

いつしか陸にいても「彼女」のことで頭がいっぱいになってしまうクレイグ。一歩ずつ近づいて、ついに心通わせた瞬間の感動ったらないだろう。タコにも人格があるんじゃないかと、ふと思ってしまった。答えを知ることはできないけれど、人間はそう信じたい生き物なのだろうな。

命を燃やす生き物たちの姿に胸を打たれる。食う、食われるの関係。まるでスパイ映画の追走劇を見るかのようなサメとタコの戦いには、思わず息を呑んだ。たった一年の寿命しかないと知っていても、どうか長く生きてくれと願ってしまう。これを愛と呼ばずしてなんと呼べばいいのだろう。

「彼女」は運命の相手だったのだ。冒頭から美しくも迫力ある映像に引き込まれる。インサートも含めて、非常に見応えがあった。また、臨場感あるサウンド(家のオーディオだけど)と絶妙に情緒を盛り立てる音楽も、バランスがいい。ひとりの男の再生の物語として見てもいいだろう。おすすめです。