映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「くれなずめ」感想

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くれなずめ、みた。あの頃みたいに大騒ぎできる高校時代の友人。でも、結婚式の余興の準備でないかぎり、ほとんど会わなくなってしまった関係。披露宴と二次会までのあいだの微妙な暇つぶしに、永遠と続くはずように思えた当時の感覚が蘇る。誰かを送り出すために集まるってちょっと寂しいですよね。

まっさきに思い出すのは「佐々木、イン、マイマイン」でしょう。ただ、「くれなずめ」はあれこれと明らかな大嘘をつく。その跳躍が爽やかであり、切なくもあるのだ。もともと舞台演劇が原作だったからか、ワンカットが非常に長く、俳優同士の空気感が生々しく伝わってくる。特に終盤の「再演」は白眉。

「俺たち全然変わんねえな!」って言いたいけど、お互いもうそんな歳でもないよね。最近そんな映画をよく見る。「くれなずめ」や「佐々木、イン、マイマイン」で重要なのはマクガフィン的に作用する「もう居ない人との別れ」ではなく、共通の言語を失い、距離感を掴みかねる「旧友」との付き合い方だ。

たしかにあの頃は仲良かったし、いまも気の合う友だちだけれど、もはや同じようなコミュニケーション手段では関わり合えない、かといって新しい話題も共有できないジレンマ。「もう居ない人」は辛うじて彼らをつなぎ止めるかすがいであり、痛みと共に消失を受け入れなければならない青春の象徴だ。

成田凌は言わずもがな、もはや何をやってもうまくて存在感が出てしまう若葉竜也、溶け込み方が異常な浜野謙太と目次立樹、藤原季節も作品によって演技のトーンを変えるのが上手い。そして、高良健吾ってクレジットの位置そこなんだっていう笑 前田敦子はああいう怒る演技やらせたら誰にも負けない。