映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「茜色に焼かれる」感想

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茜色に焼かれる、みた。交通事故で夫を奪われ、さらにはコロナ禍で店まで失ってしまった良子。尾野真千子のブルースな演技に痺れる。苦しくて仕方ないのに、どうして私は生きるんだろう?この一年で多くの人が抱えた虚無感が描かれている。しかし、理不尽なゲームをどう生き抜くか?に終始している。

撮影は去年の夏らしく、道ゆく人もみんなマスク姿。スクリーンで見ると改めて異様に感じる。コロナ禍を受けて元々あった脚本を書き換えたのかな?アクチュアルな問題が扱われており、おそらくこれからの邦画でも同様のテーマの作品が増えていくであろうことを予感させる。

まだ劇場公開作品でコロナ禍が前提になった作品って、これとホラー映画の「真・鮫島事件」ぐらいしか思いつかない。テレビドラマだったらすでに「不要不急の銀河」や「ペペロンチーノ」など傑作があるけど。しかし、高齢者ドライバーの暴走、コロナ禍の貧困と性風俗といったテーマは少々表層的である。

「ま、がんばりましょう」のセリフから漂う、人生への諦め、怒りを捨て、希望も持たないという処世術。悩み苦しんで社会に反抗した夫があっけなく死んでしまった。その事実がおそらく彼女をそうしてしまったのだろう。もちろん、映画は「それでいいの?」と問いかけるわけだけど、社会とは連動しない。

結局、彼らは個人として「生き抜く」術を見つける。相変わらず理不尽が降りかかるだろうけど、良子は亡くなった夫と愛する息子の三人で、たぶん、なんとか生きていける。でも、このどうしようもない日本に正面からぶつかり続けてほしかった。だってシアターの外に一歩出たら何も変わってないんだから。

おそらく映画は決してそのようなことを言おうとはしていないのだろうけど、じゃあ良子やケイのような「被害者」の不幸や虚しさは、自己責任なのか?押し付けられたルールを甘受すれば楽に生きられるのか?と思ってしまった。問題は宙吊りなんだから、映画の中でも明確な答え出してほしくなかった。