映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「逃げた女」感想

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逃げた女、みた。五年間の結婚生活ではじめて夫と離れ、旧知の友人を訪ねていくガミ。繰り返される会話は、だんだんデジャヴじみてくる。情報は断片的にしか示されず、ふわふわとした疎外感に戸惑っていると、徐々に彼女たちの孤独と、ガミがなにから「逃げた」のか明らかになる。ふしぎな映画だった。

ホン・サンスは「次の朝は他人」しか見ていないけど、あれもパラレルワールドの物語だった。思い返せば、今泉力哉作品の被写体を妙に突き放した撮り方は、彼の影響だったのかと。窓から見える景色、テーブルを挟んだ食事、リンゴ、ネコ、膝をなでる手のひら…。反復とズレ。その気持ち悪さ。

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途中ちょっとウトウトしちゃったんですよね。ひとり目とふたり目の間で。ただでさえ情報が少ないのに、意識が飛んでしまうと追いつくのが大変だった笑 やっぱり淡々とした会話劇(特に外国語)は、相当体調が良くないと眠くなります。

ガミとそれぞれの友人の、絶妙に思っていることがすれ違っていそうな会話。この地に足つかない感じが不安を誘う。もしかしたら、順風満帆に見える三人の女もすこし孤独なのかもしれない。ガミもまた漠然としたおそれみたいなものを抱えているように思う。それは描写の積み重ねによって生まれる。凄い。

見ている間は正直そんなに面白いとも思わなかったのだが(ちょっと寝たぐらいだし)、振り返っていくうちに徐々に心の中に織のようなものが溜まっていたことに気づく。思ったより自分の感情は揺さぶられていたのだと。シンプルに見えて超絶複雑な映画だと思う。面白かった。