映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「おやすみ、また向こう岸で」感想

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「おやすみ、また向こう岸で」をみた。超絶大傑作。山中遥子の作品は一生追いかけると誓った。「セックスはフェアなコミュケーションじゃない」と語るナツキ。そんな彼女に近づくカナコの突拍子もない提案。30分でやるには少々強引な展開も、的確な演出とドライブ感でねじ伏せる。全ショット正解です。

ホントに好きな映画って、ワンショット目の直感でわかる。体のリズムや気持ちがグッと乗っかって、あとは作品にすべてを委ねればそのまま最後まで運んでくれる。作品のビートと俺の脈がせーのでハマるかどうかなのでもはや運の要素もあるが、とにかく「おやすみ、また向こう岸で」は当たった。

ベッドでゴロンと寝転がるナツキ。歩道橋のナツキとカナコ。ふたりが部屋で語らう場面のソファ→戸を隔てたベランダの移動。目線を合わせずタバコを吸ってから、カナコの隣に座るナツキ。ヒロキとの三人の会話。ベランダを使った「ふたり」のやりとりの反復。そして、岸辺でのシーケンス。全部いい。

「おやすみ、また向こう岸で」とはどういう意味だろう?ラストショットはその鍵かもしれない。ジェンダーの不平等の話からはじまり、得体の知れない他者の存在(ここは濱口竜介の「不気味なものの肌に触れる」や「寝ても覚めても」を思い出した)、そして「人を好きになる/好かれる」ことの恐ろしさ。

本作は会話劇が主体。もちろん脚本もうまいのだけど、撮り方がすごく良い。どこに誰が居るべきか、そして、それをどこから撮るのか。一つひとつに意味が感じられたし、三人の会話でヒロキを見つめるナツキ(顔の半分しか見えない!)みたいに、ギョッとする画もある。サクサクと進むのが心地いい。

正直、山中遥子監督は「あみこ」がピンとこなくて、なにがそんなに受けてるんだと思ったけど、「魚座どうし」で度肝を抜かれ、この「おやすみ、また向こう岸で」で完全にオトされた。30分はもったいない、頼むから終わらないでくれ!と願ってしまった。

「回転てん子とどりーむ母ちゃん」も見たが、彼女はまだ短編しか撮っていない。ぴあフィルムフェスティバルの企画で池松壮亮と対談した際、長編映画を撮るかどうかの話をしてたのだが、肝心の答えを忘れた。興味あるとか言ってたような。ちなみに対談はディープで面白かった。

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