映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」感想

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ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜、観た。長野五輪を陰で支えたテストジャンパーたちの物語。なぜ自分はいま、この場所に立っているのか。テストジャンプをその意味を問う戦いと捉えたのは、いいと思った。日の丸を背負うこと、金メダルへの期待の危うさにも斬り込む。小坂菜緒が超おいしい役。

ただ、オリンピックそのものが貧乏くじ扱いされ、夢も興奮も覚め切ったこのご時世に、この映画を公開せざるを得なくなったのは、不幸としか言いようがない。じっさい、たぶんふつうに開催されていれば、あの批判的な視点もある程度は評価されたんだろうけど。もっとグロい現実が待っていたので…。

「彼は今この瞬間、ここに立つために頑張ってきたのかもしれない」という視点を伝記映画に持ち込むのは、イーストウッドがこれまで何度もやってきたことである。「ハドソン川の奇跡」や「15時17分、パリ行き」「リチャード・ジュエル」と並べるのは違うかもしれないけど、俺は少し似たものを感じた。

田中圭は思えばほとんど毎回同じ演技なのだけど、本作の主人公・西方や「哀愁しんでれら」の夫役(ここでも土屋太鳳と夫婦役だが、全く見え方は異なる)のように、腹にドス黒いものをため込んでいたり、「ウザい」人間を演じさせるとハマる。クドいといえばクドい演技なのだが、使い方次第だろう。

あと、原田雅彦役の濱津隆之がメチャクチャ良い味を出している。この映画の裏の主人公として、引くところは引きつつ、観客の心を掴むべき場面ですごく良い演技をしていた。なによりエンドクレジットの最後に名前が出てくるのに感動した。「カメラを止めるな!」からのストーリーを考えると感慨深い。

小坂菜緒はすっごくおいしい役でした。ファンとしてはスクリーンの中で躍動する彼女を見るだけで感動。ほぼ1年半前の撮影なので、いまみるとちょっと幼い。が、オリンピアンが荒れ気味なせいで学級崩壊中のテストジャンパーチームをビシッと締める体育会女子を好演。フツーにうまくてビックリした。

みーぱんや美穂も良いけど、やっぱりこさかなは日向坂46のメンバーの中でいちばん演技がうまいと思う。微細な表現も含めて、引き出しが多い。何度か内面をむき出しにする場面があるのだけど、ただ声を張るのではなく、悔しさ、憤り、夢に近づいた興奮…とそれぞれ異なる感情が背景にあるのだとわかる。

山田裕貴はとても器用な役者だと思う。難聴のジャンパーという複雑な役も、すんなり入ってきた。正直、西方の挫折が描かれる前半一時間はちょっと長かったかな。しかし、忸怩たる思いを抱えた西方が、そう簡単にテストジャンプのチームに馴染まないのがリアルでいい。ベテランがあれだと若手は困るが笑